日本国有鉄道新線建設補助特別措置法成立とその背景

国鉄時代には、鉄道建設公団が昭和39年に設立されましたが、それまでは国鉄は在来線の輸送力増強を行いながらローカル線の建設もしなくてはなりませんでした。
そんな中、国鉄は公共事業体として、公共の福祉も最大限確保しなくてはならないが、それ以上に財政の健全化は大きな問題でもありました。
当然のことながら、作っても赤字必至のローカル線は、いくら鉄道敷設法と呼ばれる法律があり、建設の義務があるとはいえ出来るだけ建設したくないと言うのが本音で有ったと思われますし、実際にローカル線の建設は後回しよなっていました。
さらに、現在でもよく言われることですが都市部にばかり金をかけて地方が蔑ろにされていると言う意見がありましたが、儲かる路線で輸送力増強や近代化を図る一方でその剰余金でローカル線の赤字を埋めざるを得なかったわけです。
その辺は、後に国鉄総裁になる磯崎氏が営業局長をしていたキャプチャ3.JPG昭和33年11月の座談会記事となります。
特にここでは、下記のような発言をされています、少し長いでですが引用したいと思います。

矢島 そういう問題はいずれ「つばめ」や「はと」や、今度の「はやぷさ」ですか、こんな列車に出て来るんでしようと聞いたところが、政府のお休方や大蔵省の国鉄担当の一部の人などに、だいぷ贅沢じやないか、ほかの通動輪送や閑散線区のサーピスから見て、あSいう特急ばかりに金をかけるのは贅沢じやないかと言われて、国鉄首脳部の方がふん切れないということでしたが。『ほんとうですか。
 磯崎 それは、通勁との問題はあるんですがね。最近数年間は、私の方の金は通勤にかけてるんですよ。「つぱめ」はデラックスと言われるんですが、モハ90(後の101系)など通勁電車としてはデラックスですよ。世界最高ですね。二aIヨークの地下鉄なんか板張だし、ロンドンやパリにしてもひどいもんですよ。
 横山 立つてれぱ同じだ。(笑声)
 磯崎 入れ方が違うんですよ。とにかく朝の新宿なんか八時から九時の間は二分ヘッドでしょう。これ以上の輸送力はっかないんです。通助時間をずらしてくれれば楽な通勤ができるんですがね。僅かの時閥に10万の人間が集まるんですからね。あの時間を外してモハ90(後の101系)に乗つてごらんなさい、実にいS車ですよ、しげしげ眺めるような。
  もう一つはローカル線との比較の問題ですが、たしかに差はあると思います。ウチの財政は運賃の上がりで賄う、しかも投資する金の大部分は自己資本ということだと、どうしても金儲けしなければならないことになってくる。そうすると、やっぱり金儲けは東海道・山陽でする以外にないんですね。ローカル線はいくらやっても、経費ばかりかSつて、収入はふえない。ローカル線で50キロ以内は、いくらやってもパスにお客を取られるんですよ。だから私共としては、東海道・山陽、東北線の非常に儲かっている所にお客を吸集(ママ)して、うんと金を取って、その金でローカル線を良くして行くという方法しかないんですね。もっとも政府が、金儲けをしないでいいから財政・投資をふやすということを考えてくれれぱ別ですが、そうでないと、独立採算制といいながらとにかく東海道・山陽でうんと金を儲けて。その金を地方に投資する以外にないと思うんです。贅沢とかなんとかいいますが。そうしないと爽京~大阪間の旅客は飛行機に取られて、やって行けないんですね。

磯崎氏の発言は当時の国鉄幹部の考え方を反映していると言えましょう、まぁいい方はざっくばらんと言うかちょっと乱暴な物言いかなと思いますが、国鉄としては政府が金を出してくれない以上はローカル線と都市部の差は出ても仕方がないと明言してしまっているわけです。

そして、実際に国鉄が昭和26年以降建設してきた路線で、白新線を除き、かなり大幅な赤字を出しており、今後建設される路線はさらにローカル線などが多いことから、今後建設される新線については特別運賃を導入して多少なりとも国鉄の負担減らすべきではないかとして、運賃制度調査会や、鉄道建設審議会で答申や決議が行われています。
少し長いですが、昭和35年5月号国鉄線の記事から引用させていただきます。
 受益者も一部を負担

  一方、開業される地区について考えると、新線の開業により地方の交通状態は改善され、利用者の受ける利益は相当大きなものがある。国鉄財政が極めて窮屈な現状と、新線開業の赤字の大きいことを考えると、受益者にも雁字の一部を負担してもらうことは必ずしも不当ではないと考えられる。
 ・以上のような見地から、この特別運賃設定のことが踏切られたのである。

運賃制度調査会の答申

 この特別運賃のことは、かねてからいろいろの機会に話題とされていた、昨年七月に出された鉄道運賃制度調査会の答申でもこの点にふれ、「現在行われている地方的な新線建設は、そのほとんどが著しい非採算線区となることが予想されるので、もしこのような新線建設が無批判、無対策に行われるとすれば、運賃の値上を招来するか、これを避けようとすれば、画一運賃制度に例外を設け、線区別特別運賃制度を採用する必要が予想される。」と述ぺ、特別運賃制度がとりあげられることを予思している。

 鉄道建設審議会の決議

 又ヽ鉄道建設審詮会でも、この特別運賃問題をとりあげ、昨年十一月九日に、「鉄道新線の建設は、わが国経済の発展に伴い今後さらに推進する必要があると認められるが、日本国有鉄道の経営上極めて大きな負担となっている。よって今後の新線については、その健全な運営に資するため開業後一定の期間特別運賃を設定することを認める。」として、鉄道新線の特別運賃設定に関する決議をしている。
 なお、鉄道建設審議会は、運輸大臣の諮問に対して答申するか、又は必要と認める事項について関係大臣に建議するのが通例で、決議の形式による意思表示は異例のことである。これは、特別運賃の設定は、国鉄総裁権限でできることであるから、関係官庁の排置を求める建議とは別個の形とするのが適当であるとしたためと解される。

参考 全文はこちらに載せておきます。
196005.JPG

こうして、指宿枕崎線の、山川~頴娃間は割増運賃が適用され、基準運賃の1.75倍の運賃設定を図りました。
今後も、ローカル線の新線建設にはこれが適用されると思ったのですが、翌年には廃止となります。
国鉄に対して建設費の利子を負担をしようという考え方で出てきたのが、日本国有鉄道新線建設補助特例措置法と言う法律でした。
この法律は、昭和36年から40年までの時限立法で、建設費の補助ではなく建設に伴う利子相当分を補助するというもので、引続き国鉄の新線建設は自前で...おこなわねばなりませんでした。
さらに、営業開始後利益が出れば利子額を減額するというもので、国鉄にしてみればあまりおいしくない助成金制度でした。

以下は、日本国有鉄道新線建設補助特別措置法の条文になります。

参考 国鉄があった時代blog 日本国有鉄道新線建設補助特例措置法案について

Tetsu-Cafe_DC10.JPG

法律第百十七号(昭三六・六・七)

  ◎日本国有鉄道新線建設補助特別措置法

1 政府は、日本国有鉄道に対し、昭和三十六年度から昭和四十年度までにおいて、日本国有鉄道が昭和三十五年度以降当該年度の前年度までに鉄道敷設法(大正十一年法律第三十七号)別表に掲げる予定鉄道線路の建設に要した資金について、運輸省令で定めるところにより計算して得た当該年度の前年度分の利子の額に相当する額の範囲内において、予算で定めるところにより補助することができる。

2 前項の規定による補助(以下「新線建設補助」という。)に係る予定鉄道線路について、営業の開始後、運職省令で定めるところにより計算して得た利益を生じた場合は、その利益の額に相当する額を翌年度の新線建設補助に係る前項の利子の額から控除するものとする。

3 日本国有鉄道は、前項の場合において、その利益が当該線路につき最初に新線建設補助が行なわれた年度から起算して十五年度以内に生じたときは、その翌年度において、政府に対し、その利益の額の二分の一を下らない金額を、運輸省令で定めるところにより計算して得た当該線路に係る新線建設補助の額の合計額に相当すると認められる額に達するまで還付しなければならない。

4 運輸大臣は、前三項の運輸省令を定めようとするときは、大蔵大臣と協議するものとする。

   附 則

 この法律は、公布の日から施行する。

(大蔵・運輸・内閣総理大臣署名) 

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