鉄道公安職員の職務に関する法律の制定とその背景

現在は鉄道警察隊という組織がJRの駅を中心に有りますが、国鉄時代には鉄道公安職員、「公安官」と呼ばれる国鉄職員がいました。
鉄道公安官は、法律第二百四十一号(昭二五・八・一〇)鉄道公安職員の職務に関する法律により定められたもので、国鉄職員として採用されて2年経たものから選考試験により採用され、あくまでも国鉄職員としての身分でした。
条文を参照しますと。
「日本国有鉄道の列車、停車場その他輸送に直接必要な鉄道施設内における犯罪並びに日本国有鉄道の運輸業務に対する犯罪について捜査することができる。」
とあるように、駅構内など鉄道敷地内での捜査権はありますが、それ以外の場所では原則として捜査の権限はありませんでした。
また、唯一国鉄職員ではありましたが武器の携帯が許可されており、第7条にその根拠規定が示されています。

 (武器の携帯)
第七条 鉄道公安職員は、その職務を行うため、小型武器を携帯することができる。

ただし、その使用は厳しく制限されていました。

また、警察官と異なり、公安職員は運輸大臣の指揮系統に入るそうで、その辺りが警察とは異なっており、あくまでも国鉄職員である点が警察官と異なっているところです。

ただ、制服は夏服が鼠色、冬服は紺色で一般の国鉄職員の制服と異なりむしろ、昔の警察官の制服に似ていましたし、帯革を巻くので、遠目には警察官のように見えることもありました。

そもそも鉄道公安職員と言う制度が始まったのかといいますと、それは鉄道車内における犯罪の多さであり、GHQの指示により車内犯罪の防止と言う観点から組織されたのが、鉄道公安職員だったのです。
設置に当たって、設置自体はさほど問題にならなかったのですが、武器の使用に際しては議論の対象となりかなり積極的な意見交換が行われたそうです。
第8条の条文を下記に示させていただきます。
 
(武器の使用)
第八条 鉄道公安職員は、その職務を行うに当り、特に自己又は他人の生命又は身体の保護のため、やむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合においては、その事態に応じ合理的に必要であると判断される限度において、武器を使用することができる

であり、この点に関しては、正当防衛・緊急避難の場合以外は使用しないことが明記されています。
実際には、公安職員が拳銃を携帯することは殆ど無く、主たる武器と言えるものは特殊警棒でした。
その辺は警察官も同じで、私も警察官当時拳銃は常時携帯はしていたものの、其使用は厳しく制限されていました。

なお、昭和25年10月の国鉄線に公安職員の性格についてまとめた文章がありましたので併せてここに掲示させていただきます。
キャプチャ886.PNG
参考 公益財団法人 交通協力会

昭和23年から26年までの犯罪件数を見ますと昭和23年強盗が83件、昭和26年には54件と若干減ったものの、窃盗は12000件から56000件に増加するなど、その犯罪数は減るどころか増えています。
終戦当時鉄道犯罪件数.PNG
昭和30年代になると減ってはいることが伺えます。
昭和35年~40年鉄道犯罪件数.PNG


***********************************鉄道公安職員の職務に関する法律***********************
法律第二百四十一号(昭二五・八・一〇) 
◎鉄道公安職員の職務に関する法律
 (職務)
第一条 日本国有鉄道の施設内において公安維持の職務を掌る日本国有鉄道の役員又は職員で、法務総裁と運輸大臣が協議をして定めるところに従い、日本国有鉄道総裁の推せんに基き運輸大臣が指名した者は、これを鉄道公安職員と称し、日本国有鉄道の列車、停車場その他輸送に直接必要な鉄道施設内における犯罪並びに日本国有鉄道の運輸業務に対する犯罪について捜査することができる。
 (捜査の場所的制限)
第二条 前条の捜査は、日本国有鉄道の列車、停車場その他輸送に直接必要な鉄道施設以外の場所においては、行うことができない。
 (刑事訴訟法の準用)
第三条 鉄道公安職員の捜査に関しては、この法律に別段の定めがある場合を除く外、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)に規定する司法警察職員の捜査に関する規定を準用する。但し、現行犯人又は被疑者を逮捕した場合には、これを検察官又は警察職員に引致しなければならない。
 (所管区域)
第四条 鉄道公安職員は、捜査に関し、その所属する事務所の所管区域外で職務を行うことはできない。但し、列車警乗その他政令の定めるところにより特別の必要がある場合は、この限りでない。
 (協力)
第五条 鉄道公安職員と警察職員とは、その職務に関し、互に協力しなければならない。
 (監督)
第六条 鉄道公安職員の捜査に関する職務は、運輸大臣が監督する。
 (武器の携帯)
第七条 鉄道公安職員は、その職務を行うため、小型武器を携帯することができる。
 (武器の使用)
第八条 鉄道公安職員は、その職務を行うに当り、特に自己又は他人の生命又は身体の保護のため、やむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合においては、その事態に応じ合理的に必要であると判断される限度において、武器を使用することができる。
   附 則
 この法律は、公布の日から施行する。

(法務総裁・運輸・内閣総理大臣署名)

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